〈厚木王子・上〉厚木王子初めての夏。変わらぬ青と、新たな二本線
校名が変わる。ユニフォームが変わる。野球部のOBからすると寂しさもあるが、思いはつながっている。厚木王子になって最初の夏に挑む3年生は、2学年上の厚木東の先輩たちの思いも背負って戦う。
(文・写真/久保弘毅)
新ユニフォームに込めた思い
厚木東と厚木商業。道一本へだてて建っていた両校が統合され、2024年4月から『厚木王子』になった。
厚木商業には野球部員がいなかった。厚木東のメンバー6人に、この春1年生3人が加わり、記念すべき厚木王子の1年目は単独チームで夏の大会を迎えられた。
新しいユニフォームは、和田晃監督や選手たちの思いが詰まったデザインになっている。厚木東時代からの青色を基調に、胸には「OHJI」のロゴが入る。こだわりはストッキングの2本線。和田監督は「厚木東と厚木商業、2つでひとつという意味で、今年からこの2本線を入れました」と、デザインに思いを込めた。
キャプテンの鈴木空も「商業と東、2つの高校の歴史を意味するソックスの2本線に今まで一緒にプレーしてきた青色がベースになっています。厚木東の歴史を受け継ぐ意味でも、この青色は大事にしていきたい」と語る。厚木東のOBも厚木王子のユニフォームを見守ってくれることだろう。
今の3年生のひとつ上の代は、学校統合の影響などもあり野球部員がいなかった。2022年夏は3年生と1年生だけという、少し変則的なメンバー構成だった。
和田監督は言う。
「2年前の3年生は、今の3年生のことをかわいがっていたし、夏が終わったあとも『1年生は大丈夫かな』と気にかけていました。卒業後も練習をよく手伝ってくれています。今の3年生も2つ上の先輩を慕っているし、一緒に戦って勝った夏の試合は、彼らにとって大きな財産になっているでしょう」
2022年夏、1回戦で厚木東は15対6で岸根に勝利している。女子マネージャーの井上紗絵のシートノックでも話題になった。
少しシャイな選手がそろう今年の3年生だが、2年前の先輩との思い出になると、言葉が自然とあふれてきた。副キャプテンの深瀬桜晴は、先輩たちに感謝していた。
「2年前の夏の大会で1勝できたのは、とてもいい経験でした。初めての大きな大会で緊張していたら、2つ上の先輩がアップから声をかけてくれたおかげで、最後まで集中を切らさずプレーすることができました」
1年秋からキャプテンを務める鈴木空にとっても、2つ上の先輩は憧れの存在だった。
「自分たちにとっての先輩は、2つ上の先輩です。キャプテンになってからも『キャプテンだった石田海斗さんはどうしていたかな。石田さんなら、どういう声をかけていたかな』と、いつもお手本にしています」
校名は変わるが、2年ぶりの夏の1勝が、2つ上の先輩たちへの最高の恩返しになる。