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〈慶應義塾・下〉「KEIO日本一」から1年。新たな伝統を創る夏へ



夏の甲子園を制したあの興奮から1年が経とうとしている。「夏の王者」として注目を集めた昨秋は、準々決勝で桐光学園に0対4で敗戦。今春は準々決勝で横浜に4対9で敗れ、第二シードから夏の神奈川連覇に挑む。

(文/大利 実 写真/大利 実、BK編集部)



投手陣を助けるために打力を強化


 春の大会に入る頃、一塁側ベンチ前のホワイトボードに『全国での勝算を創る』『新たな伝統を創る』という言葉が書き込まれた。

「勝算」。つまりは、どうやって勝つか。


 森林監督が描くプランとは――。

「小宅と鈴木は経験値があり、調整能力も高い。ただ、ピッチャーに期待し過ぎると彼らにも重圧がかかるので、6月に入ってから、打力と筋力強化に力を入れています。2年生も多いので、まだまだ伸びる。『2~3点取られても、打って取り返すよ』というチームのほうが、ピッチャーも思い切って投げることができるはずです」


 投手陣は、経験豊富なふたりに加えて、「一番調子がいい」と加藤が期待を寄せる加賀城祐志らが控える。



夏に向けて状態を上げている加賀城。ここまでの悔しさを、最後の夏にぶつける



 加賀城はストレート、チェンジアップ、カーブのコンビネーションが武器の右腕だ。

「ずっとベンチには入れてもらっているんですけど、『ベンチにいるだけでは意味がない』と強く思うようになりました。昨秋の大会が終わってからは、『おれが投手陣を引っ張る』という気持ちでずっとやってきて、夏こそピッチングでチームに貢献したいです」

 理想の投手は大貫晋一。横浜で育ったこともあり、DeNAファンだ。

「ハマっ子なので、ハマスタで投げられることになれば最高にうれしいです」

 準決勝、決勝のマウンドで投げることをイメージしながら、練習に励んでいる。


3年生の強い想い「自分たちが引っ張る」


 春のスタメンを見ると、3年生の野手は加藤、廣瀬央裕、成戸洋介の3人。長打力が売りの廣瀬は昨夏、一次登録メンバーには入っていたが、直前で20名から漏れた。

「日本一は喜びと同じぐらい、悔しさがありました。甲子園の舞台に立ちたかった。その気持ちをずっと忘れずに、練習してきました。自分の結果だけでなく、チームのためにやれることを考える。2年生に引っ張ってもらうのではなく、『自分たち3年生が引っ張るんだ』という強い気持ちでやっています」



野手陣を引っ張る3年生の成戸(左)と廣瀬(右)。昨夏喜びと悔しさを経験した分、甲子園への思いは強い

 成戸は文武両道の校風に憧れて、奈良から慶應義塾に入学。守備に自信を持つ一方で、「課題」と認めるバッティングはスイングを繰り返し、速球にも力負けしない強さを身に付けてきた。

「昨年まで、大村さんと一緒の場所に住んでいたこともあって、いろんなことを教わりました。大村さんはグラウンドだけでなく、生活もしっかりしている。そういうところが勝ちにつながったんだと思います」

 取材前日にも、大村とご飯に行き、激励を受けたとのこと。甲子園に行くことが、お世話になった先輩への恩返しになる。


全員で気持ちをひとつに甲子園へ


 春の大会後、新たに設けたスローガンは『All Soul』。メンタルチーフの久保田修斗が考案した。「強豪校を追う(追う=All)、チームを創る(創る=そうる=Soul)」にかけた言葉だ。

 最後は、キャプテン加藤に締めを。

「昨年、チーム全員で戦って、試合のたびに成長の実感を得られたのが本当に楽しかった。今年もそういう夏にできたら最高です」

 春季関東大会では、深紅の大優勝旗をお披露目するために、ひとりで行進した。「寂しかったですよ」と本音を漏らす。夏こそ、仲間とともに大優勝旗を持って、甲子園に戻る。



伸び盛りの2年生野手陣。左から江戸佑太郎、青木祐貴、酒井、紺野真太郎、原




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