〈横浜・上〉上級生と下級生の力を融合。熱く熱く熱く、夏の頂点を獲りにいく
今春の準決勝で東海大相模に敗れたあと、村田浩明監督は大きな決断を下した。3年生の椎木卿五から2年生の阿部葉太に、キャプテンを託す。5月にして異例の主将交代に込めた思いとは――。
(文/大利 実 写真/大利 実、BK編集部)
「勝ちたい気持ち」が強い新主将・阿部
「周りからは、『何かあったんですか?』と言われるんですけど、何もないですよ。見ていただくと分かると思いますが、夏に向けて、いい方向に進んでいます」
6月中旬、横浜高校長浜グラウンド。村田監督の言葉通り、活気あふれる雰囲気で練習が行われていた。その中心にいるのは、2年生の新主将・阿部だ。
「人一倍、勝ちたい気持ちが強いのが阿部。チームをさらに良くするために、学年に関係なく、阿部に託しました。『キャプテンどうだ?』と聞いたら、『自分で良ければ、やらせてください』と。大人と対等に話せて、チームに厳しいことを言うこともできる。マインドや気持ちの強さは、緒方(漣/國學院大)に匹敵するものがあります」
阿部自身は、この大役をどう感じているのか。小学、中学でもキャプテンを務めてきたという。
「新チームからキャプテンをやるつもりだったので、それが少し早くなったのかなという感じです。キャプテンになったことで、今まで以上に自分が思っていることを口に出せるようになりました。自分が引っ張っていきたいと思っています」
キャプテンとして、どんなチームを求めているのか。
「選手同士でどれだけ厳しさを持てるか。たとえば、練習試合で打てなかったときにそれを流してしまうか、厳しく言い合えるか。練習や練習試合では、完璧を求めてやっていかないといけないと思っています」
グラウンドに入れば、学年は関係ない。
2年生エースの奥村頼人に聞くと、「キャプテンになる前から、チームを引っ張ってくれていたのが阿部。頼もしい存在です」と、絶大な信頼を寄せている。
3年生として阿部を支えていく
現チームは、3人目のキャプテンになる。最初は三塁コーチャーの岩本龍大が務め、秋が終わってからは正捕手の椎木が引き継ぎ、5月中旬から阿部が就いた。
新チーム当初から、「主力に引っ張れる上級生が少ない。キャプテンを任せることで、自分のプレーに負担がかかることは避けたい」という声が、首脳陣から挙がっていた。
「椎木にキャプテン、キャッチャー、4番と、いろんなことを背負わせてしまっていたかなと。上の世界を目指している選手でもあるので、ここからは『プレーで引っ張ってほしい』と伝えました」(村田監督)
6月上旬の練習試合では、左中間に特大のホームランを放つなど、中軸としての存在感をこれまで以上に見せているという。
ただ、椎木本人には当然のことながら、複雑な気持ちも残っている。
「悔しい気持ちはもちろんあります。プレーでも言動でも、もっとやれることはあった。自分が思っていることをもっと言えばよかったし、指導者の方々ともっと会話をするべきでした。でも、くよくよしていても仕方がないので、阿部がひとりで背負い込まないように、3年生として支えていきたいです」
チームの目標は、夏の神奈川を制し、甲子園で勝つこと。体制が変わっても、目標に対する強い想いは、誰も変わっていない。