〈横浜・下〉上級生と下級生の力を融合。熱く熱く熱く、夏の頂点を獲りにいく
今春の準決勝で東海大相模に敗れたあと、村田浩明監督は大きな決断を下した。3年生の椎木卿五から2年生の阿部葉太に、キャプテンを託す。5月にして異例の主将交代に込めた思いとは――。
(文/大利 実 写真/大利 実、BK編集部)
トレーニングと食事でフィジカル強化
昨年の冬から、新たな取り組みを始めた。これまでほとんどやっていなかったウエイトトレーニングに着手し、デッドリフトやスクワットなどで股関節周りの筋肉を重点的に強化している。
主砲の椎木は、一冬で体重が8kgアップした。
「村田監督から『何か増やしたいメニューはある?』と聞かれて、みんなで『ウエイトがやりたいです』と伝えました。秋の関東大会でも感じたことで、他県の強豪に比べると、体のでかさやパワーの部分で、自分たちは1ランク落ちると感じていました」
椎木ともに打線を引っ張るのが、昨秋は2桁背番号を着けていた松村海青だ。冬のトレーニングと食事によって体が変わったことで、打球に強さが増した。
「2年秋の県大会までは自宅から通っていて、そこから寮に入ることができました。寮では、夜に700グラムのお米を食べて、それでも足りない場合は寝る前にもお米を食べる。冬から始めたウエイトトレーニングの効果もあって、今までのバットと同じように打てている感覚があります」
「総合格闘技が大好き」ということもあり、体づくりには強い興味を持っている。
打撃陣は椎木と松村に加えて、3年生の上田大誠や栗山大成、峯大翔らがスタメンの座を争う。1年生の小野舜友がレギュラー候補に挙がるなど、熾烈な競争が繰り広げられているが、上田が3年生の意地を口にする。
「周りからは『今年の横浜は下級生中心のチーム』と言われるんですけど、人数に関係なく、『3年生がチームを引っ張る』という気持ちは強く持っています。もうサポートに回ってくれている3年生もいるので、それぞれが自分の役割をまっとうできるように取り組んでいるところです」
最後まで熱く熱く戦い抜く
投手陣は、最速146km/hの2年生左腕・奥村頼人を中心に、サイドスローに転向した3年生・青木朔真、期待の1年生・織田翔希ら、個性豊かな顔ぶれが揃う。
奥村は、「自分が一番長いイニングを投げて、優勝したい」と堂々と語る。精神的にきつくなったとき、いつも声をかけてくれるのがセンターの阿部だという。
「昨年はショートの緒方さんがよく声をかけてくれていたんですけど、緒方さんがいなくなってからはちょっと寂しくて……。今は阿部がセンターからマウンドに聞こえる大きい声で、声をかけてくれるようになって、それが嬉しい。ピッチングがダメなときは、厳しいことも言ってくれるので心強いです」
こういうところも、2年生でキャプテンに推された理由なのだろう。
昨夏は決勝の9回表まで2点リードする展開も、逆転サヨナラ3ランを浴びて慶應義塾に敗れた。今春、保土ヶ谷球場で慶應義塾の応援歌を聴いた村田監督は、「あの夏のことを思い出して、涙が止まらなかった……」と明かす。それだけ夏の敗戦は重い。
夏を勝ち抜くカギはどこにあるか。
「『勝ちたい』という気持ちをどれだけ熱く強く持てるか。メンバー20人だけでなく、スタンドの応援も含めて、本気で勝ちたいと思うチームになれるかです」
三塁側のホワイトボードには、「熱く熱く熱くなれ‼ ~燃え上がる炎のように~」と村田監督によるメッセージが書き込まれている。
昨夏の決勝のように、逆境の場面は必ずある。その逆境を跳ね返せてこそ、本当の強さ。最後の最後まで、熱く熱く戦い抜く。