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〈横浜緑園/横浜旭陵・下〉合同チームでも3年間で野球が上手くなる



野球が上達する喜びこそが、野球の原点であり、その後のモチベーションにつながる。少人数でも、狭い場所でも練習できるメニューがあれば、合同チームでも強くなれる。野球を楽しめるようになる。横浜緑園・横浜旭陵は考え抜かれたメニューで個を磨き、組織力を高めていた。

(文・写真/久保弘毅)



細かい動きを実戦につなげていく


 横浜緑園・横浜旭陵では、アップの一環でシャドーボクシングをする。足をかかとから出しながら股関節に乗せてジャブを入れていく動きが、あとの練習にもつながる。



アップで行うシャドーボクシング。かかとから踏み出して間合いを調節する動きが、ゴロ捕球などにもつながる


 地面に置いたボールを拾い上げるシャトルランでは、増田監督の指示が細かくなる。

「体の正面でボールに入って、捕ったら右足にへそを持ってくるように」

 右足にへそを持ってくることで、右の股関節に体重が乗って、切り返せる。ゴロを捕球して送球する、一連の流れをイメージながら取り組む。右の股関節に乗せる動きは走塁にも役立つと、増田監督は言う。

「これは私の感覚ですけど、右足のつま先を少し開いてスタートを切ると、右の股関節に体重が乗って、スタートが切りやすくなります。仮に逆を突かれた時でも、右のお尻を起点にターンすれば、帰塁できます」


ボールの正面に入って、右の股関節に乗せて、切り返す。シャトルランにゴロ捕球を組み合わせたメニュー



 体の使い方は教えるが、強制はしない。型にはめすぎないから、選手たちも楽しそうに取り組んでいる。

3年生のセカンドの島田海馳は、横浜緑園に入学当初は高校野球をするつもりはなかった。しかし「先生たちの指導の雰囲気がよかったから」と、野球部に入った。中学までは外野手だったが、3年間かけて内野手らしい動きを覚えた。増田監督の言う右の股関節に乗せる動きも、島田が一番スムーズにできる。島田は「感覚的な部分だから、うまく説明できない」と言うものの、後輩たちに練習の意図を率先して説明していた。



外野手の練習では、切り返しを入れながら真っすぐ背走するメニューや、球際で捕球するメニューなどがある


単独で出場するのが本来の形


 合同チームでも、少人数で上達できるメニューがあれば県大会にも出られる。2024年春は横浜緑園・横浜旭陵に大和東の3校連合で県大会に出場した。2022年秋、2023年春は9校連合で県大会に出場し、話題になった。

キャプテンの大川烈央と島田は、9校連合だった時代を経験している。大川は言う。

「9校連合の時は、みんな仲が良かったので、そういうチームが県大会に行けるんだなと感じました。その時のエースだった亀井翔之介さん(釜利谷)からも刺激を受けました」

 横浜旭陵の野球部は、大川が入部して始まった。1年生の時の部員は大川一人だけ。先輩もチームメイトもいなかった大川にとって、9校連合の仲の良さは思い出に残っている。


 互いの距離を近づけるために、横浜緑園・横浜旭陵では遊びの要素が入ったトレーニングも行う。4人で7つのボールを奪い合い、先に3つ集めたら勝ちになるトレーニングを、増田監督は「だんご3兄弟」と名づけて、チームビルドに役立てていた。


7つのボールを4人で奪い合う、通称「だんご三兄弟」。遊びのようなメニューのなかで、視野の広さや判断力が鍛えられる


 色んな人と交流できる連合チームの良さもあるが、増田監督は気を引き締める。

「連合が居心地よくなってしまうのはよくないんです。単独で出場するのが、本来の高校野球の姿ですから。単独で出場できるようになったチームは拍手で送り出そうと、選手には言っています」

 春に一緒に戦った大和東は、夏は単独で出場する。もっと一緒に戦いたい気持ちもあるだろうが、快く送り出すのが礼儀でもある。

 

 4月からスタートした横浜緑園・横浜旭陵の2校連合は、6月下旬にようやくチーム初勝利を挙げた。増田監督は「俺たちに調整なんてない。雨の日の練習でも、今日一日でうまくなるという気持ちでやってほしい」と、選手たちに呼びかけていた。

 

 キャプテン大川は、最後の夏に思いを込める。

「この3年間、色んなチームと組ませてもらったことを感謝しています。夏は過去2回ともノーヒットで負けているので、今年はみんなが納得のいく試合がしたい」

 いつか単独で出場する日のために、後輩たちへバトンをつないでいく。


個人練習で置きティーに励むキャプテン大川

 



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