〈横浜隼人・上〉注目のバッテリーを中心とした「綱引き野球」で頂点へと駆け上がる
激戦区神奈川で存在感を示し続けている横浜隼人。春の悔しさにベンチ外メンバーのエネルギーも加えた「綱引き野球」で、今夏ノーシードからの下剋上での頂点を目指す。
(文・写真/猶木充和)
悔やまれる1球からの成長
昨年、春の神奈川県大会で3位となって関東大会出場を果たした横浜隼人だったが、第1シードで迎えた夏は5回戦で日大藤沢に4-5の惜敗を喫した。迎えた新チームも秋4回戦で再び日大藤沢と対戦して2-5と敗れたところからのスタートとなった。
部員は総勢139名。就任33年目の水谷哲也監督が「最近では一番多い」という1学年60人という3年生が中心になる。その軸となるのは、エース右腕の沼井伶穏と正捕手を務めるキャプテン・山野井寛大のバッテリーだ。特に沼井は、身長186cmの長身からのしなやかな腕の振りで最速150km/hの速球を繰り出し、そのポテンシャルが高く評価される注目の存在。プロのスカウト陣も集結し、神奈川No. 1右腕との声も上がっている。
そのバッテリーが「1球の怖さを知った」と口をそろえるのが、今春の2回戦、平塚学園戦だった。3回表に1点を先制し、沼井が5回まで快調にスコアボードにゼロを並べたが、6回裏に1死1塁からタイムリー3塁打を浴びると、さらに逆転を許して1-2でゲームセット。「流れに身を任せすぎた。もっと集中して投げないといけない場面だった」と沼井。「長打だけは防がなくちゃいけない場面でボールの選択を間違えた」とは山野井。最終的に沼井は8回を投げて5安打8奪三振で2失点の好投もチーみは早期敗退となった。
しかし、負けから学ぶものは大きい。水谷監督は「あの負けを経験して成長した。バッテリーが慎重かつ大胆に、ただ漠然と投げるんではなくて一つ一つのアウトのデザインを考えながら試合を作ることができるようになった。そのバッテリーを中心に、しっかり守りを固めて、そこから攻撃に移って行ける面白いチームになった」と目を細める。
そして例年通りに「量質転化」の練習で力を磨いた野手陣では、秦野誠之、岩城匠海の二遊間の守りが固く、春は3番を打っていた外野手の小笠原友希が高い出塁率を武器に新リードオフマンとして働く。そして扇の要である山野井主将が、4番として打線の核にもなる。関東大会に出場した前年のチームよりも長打力では劣るが、1番から9番まで粘り強くコツコツと繋ぐ打線で相手に襲いかかる。
課題はチャンスでの1本。岩城は「春に負けた平塚学園戦ではあと1本がでなかった。チャンスで打てていれば勝てていた」と振り返りながら、春以降の練習試合の中で「力むことなく、いかに普段通りのバッティングができるか。全員がそれをテーマに練習をしてきて、チャンスでも打線が繋がるようになってきた」と打線の進化に手応えを話す。
「量質転化」の練習に汗を流す横浜隼人ナイン。
恒例の「スペシャルファイナルマッチ」を経て夏へ向かう