〈横浜隼人〉沼井伶穏(3年・投手)&山野井寛大(3年・捕手)/中学時代から絆を深めたバッテリー。エース&主将としてチームを甲子園へと導く
今秋のドラフト候補に挙げられているプロ注目の右腕が、沼井伶穏だ。ナイジェリア人の父を持ち、身長186cm、82kgのしなやかな肉体は将来性を感じさせる。驚くべきは成長度。高校入学時には130km/hだったストレートが、日々の鍛錬と体重増加によって大きく伸び、大会前の6月の練習試合では自己最速を1km/h更新する150km/hをマーク。「自分の中ではまだまだ(球速を)出せるという感覚がある。夏の大会中でも150km/hより速いボールを出したい」と自信を見せる。
その沼井のボールを受け止めるのが、主将で捕手の山野井寛大だ。父・成仁さんは横浜高校OB松坂大輔を擁して甲子園春夏連覇を成し遂げた1998年のベンチ入りメンバー。「今はあまり野球の話はしないですけど、YouTubeで父の映像を見たりして、子どものころから憧れの存在です」と語る。沼井をリードしながら、チーム全体を見渡して声を張り上げ、水谷監督から「3年生だけで60人いますからね。それを同じ方向に向けるのは大変。でも精神的に強い。へこたれない。常に声を出して周りを動かせるのが彼の強みですね」と信頼を寄せられている。
実はこのふたりは中学時代からのチームメイトで、中本牧リトルシニアの出身者。そして当時は山野井がエースとしてマウンドに立ち、沼井は3番手の控え投手だった。高校入学当初も山野井は投手として登板していたが、1年秋から捕手となり、そこから沼井が急成長。「一番は制球力がアップしたこと。精神的にも自分をコントロールできるようになった」と山野井は、今や神奈川屈指の右腕となった沼井を評する。
横浜隼人が2009年夏以来の甲子園出場を果たすためには、このふたりの活躍が不可欠だ。「今は沼井が投げれば大丈夫という安心感がある。普段から仲がいいですし、春に負けてからさらに配球面でもいろいろと話をしてきた」と山野井。「中学から一緒にやってきて、山野井の考えていることは分かるし、僕のことも分かってもらえている」と沼井。チームの命運を握る“黄金バッテリー”の今夏の戦い、今夏のさらなる進化に期待だ。
(文・写真/猶木充和)