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〈武相・下〉強打でつかんだ42年ぶりの春の頂点。「雑草の逆襲」で狙う56年ぶりの聖地



この春の「主役」と言っていいだろう。新基準バットで長打を連発し、3回戦から決勝まですべて5得点以上。鍛え抜かれたフィジカルと技術で優勝を遂げ、古豪復活を印象付けた。チームの視線は夏の甲子園に向かっている。

(文/大利 実 写真/大利 実、BK編集部)



やってきたことに自信を深めた春


 秋冬春と季節が過ぎるたびに、チームはたしかな成長を遂げている。「やってきたことが間違いではなかった」と語るのは、キャプテンでショートを守る仲宗根琉空だ。

「ひと冬、ずっとウエイトトレーニングをやってきて、全員で1分1秒も無駄にせずに取り組んできた自信があります。入学時、ベンチプレスの重量が50kgだったのが、今はMAX90kg。ボールの威力に負けない、インパクトの強さが身についたと思います」


 4番を打つ平野は、準々決勝からノーステップ打法に変更し、決勝までの3試合で12打数7安打と爆発した。

「勝負は夏。春のことは一度置いておいて、絶対に夏の甲子園に行くという気持ちで、今は練習をしています」

 憧れの選手は筒香嘉智(DeNA)。夏の準決勝、決勝は、DeNAの本拠地・横浜スタジアムで行われる。主砲として、勝負を決める一本を打つために、日々バットを振り込む。


関東大会後10日間の自主練習


 春季関東大会は、埼玉2位の昌平に7回コールド0対8の完敗を喫した。じつは、大会の数日前から体調不良者が続出し、レギュラーの大半が万全の状態ではなかった。

「コンディションの重要さを、選手自身が一番実感したと思います。アップを終えたあと、汗をかいたアンダーシャツを着替えること、食事と睡眠をしっかりとることなど、今一度徹底しています」(豊田監督)



春の大会で自信を深めたバッテリー。左から八木隼俊、吉﨑創志、仲間球児朗、三上煌貴

 翌日から、主力メンバーは10日間の自主練習に入り、心身の疲労を取るために、あえて練習の強度を落とした。

「春が終わった時点で、夏に勝つために何をすべきかを考えています。打線は変わりなく好調を維持していて、ピッチャーも春に頑張ってくれた八木(隼俊)、仲間(球児朗)、三上(煌貴)が安定しています」


 春は投手兼野手として活躍した仲間だが、夏は負担を考えてピッチャーに専念する可能性も。仲間が守っていたセンターは、攻守のバランスに優れた中野雄太と、足と守備範囲が武器の斎藤優希がスタメンの座を争う。試合当日のコンディション等を見ながら、ベストな布陣で臨む。



春は投手兼野手として活躍した仲間だが、夏は「ピッチャーでもっとチームに貢献したい」とマウンドへの思いを語る

ひとつのことに必死に本気で取り組む


 春の神奈川を制したあと、豊田監督は就任後初めて「甲子園」を口に出した。

 2020年の新チームから指揮を執り、最初の3年間はチームの土台をつくることに時間を割き、何事も一生懸命に取り組むことの尊さを伝え続けてきた。2023年の新チームから、技術指導に本格的に着手し、野球で勝つことに重きを置いてきた経緯がある。

「段階を踏んできている手応えはあります。ずっと言い続けているは、自分たちはエリートではなく雑草。『雑草の逆襲』を見せていきたい」

 格上のエリート集団にいかに勝つか。

 「ひとつのこと、ひとつのプレーに、必死になって本気で取り組むこと。全員で一生懸命にやることが何よりも大事。スタンドの応援も含めて、チーム全体がひとつにならなければエリートには絶対に勝てません」

 第一シード。春の王者。注目がより高くなるが、重圧は感じているのだろうか。

「いや、楽しいですよ。うちの選手たちは簡単に負けないですから。準決勝の横浜スタジアムまで勝ち上がることができれば、そこからは違う景色が見えて、勢いにも乗ることができると思っています」

 指導陣も選手も、56年ぶりの頂点を本気で狙っている。



チーム全員の気持ちをひとつにして、目指すは56年ぶりの夏の甲子園。歴史を変える夏にする





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