〈川崎総合科学〉星野大翔(3年・投手)&山口泰生(3年・投手)/タイプの違う左腕2枚で勝負
2021年夏は剛腕・加藤隆斗(高知ファイティングドッグス)が話題になった。今年は星野大翔と山口泰生のふたりの左腕がいる。単独チームで出場できなかった時代を乗り越え、総合科学に「好投手が育つ」土壌ができてきた。
19年目の遠藤監督は「ウチは野手から投手をつくっています。加藤だって中学時代は外野手でした」と話す。
今年のエース星野も、昨夏まではセンターだった。遠藤監督は「ボールに一番力があって、人間的にもエースにふさわしい」と、新チームから主戦に抜擢した。キャプテンの諸戸も「星野は常にエースとして、いい時も悪い時も、自分の持てる力をすべて出してくれる」と、信頼を口にする。
星野自身は「センターからのバックホームでのコントロールが、ピッチングにも生かせているのかな」と言う。左投手特有のクロスファイアーの球筋が強く、制球にも破綻がない。適度な逆球もあるから、左打者に踏み込ませない怖さもある。山口は「真っすぐの強さだとか、同じ左投手として勉強になる」と、星野のよさを認めている。
背番号10の山口は、小さいながらも力をつけて、今ではチームに欠かせない左腕になった。遠藤監督は「山口は四死球で崩れないし、チェンジアップがあるから右打者に強い。『3年間まじめに取り組めば、山口さんみたいになれるんだ』と、後輩たちにも感じてもらいたい」と、3年間の成長を絶賛する。
山口は「チェンジアップは山岡泰輔さん(オリックス)の握りを手本にしました。小さな手で七色の変化球を操る山岡さんの投げ方が、真似しやすかったです。チェンジアップで腕の振りが緩くなったら意味がないから、自信を持って強く腕を振っています」と語る。
研究熱心な山口の姿を見てきた星野は「自分が崩れても(山口)泰生がいる。だから安心してセンターに回って、打席に集中できる」と言っていた。星野から山口への継投は、練習試合からやっている。夏も左2枚の必勝リレーが何度も見られるだろう。
「星野と山口、どちらで負けたとしても悔いはない。それだけ素晴らしい取り組みをしてきたふたりです」
遠藤監督の言葉からも、ふたりへの思いが伝わってきた。
(文・写真/久保弘毅)