〈日大藤沢・上〉緩い当たりを制して、激戦の神奈川を制する
神奈川の強豪私学の顔ぶれは変わらないが、近年は世代交代でチーム力がやや揺らいでいる学校も多い。だから、「この2~3年が勝負」と、山本秀明監督は力を込める。苦しい時代も戦力を維持してきた日大藤沢がこの夏、神奈川の序列を変えるか。
(文・写真/久保弘毅)
低反発バットにどう対応する?
春の日大藤沢は、県大会4試合で無失策。山本秀明監督は「県大会でノーエラーは久しぶり。よく戦えた」と言うものの、春から導入された新基準の低反発バットに頭を悩ませている。
「バットが変わって、試合展開が読みづらくなりました。得点の期待値が下がる分、我慢ができないと勝てないのは当然ですが、打球が弱くなるから、特に内野手は打球との距離感を変えていかないと」
今年の日大藤沢の内野陣はメンツがそろっている。セカンドにはキャプテンの牧原賢汰がいる。秋まではサードだったが、山本監督は牧原の将来も見据えてセカンドにした。ショートには2年生の半田南斗。軽く振っても遠くに飛ばせる1番打者は、体力がついて送球も力強くなった。守備力なら半田以上の佐藤圭汰は、サードで堅守を誇り、打つ方でも意外性を発揮する。ファーストには山本監督の「2年生のレギュラーを入れておきたい」意向もあり、石川侑汰が抜擢された。
山本監督は「バタバタするような内野陣じゃない」と言いながらも、当たり損ねの緩い内野ゴロを警戒する。
「たとえば今まで2バウンドだった打球が、低反発バットだと3つバウンドする。その3つ目でイレギュラーする可能性もあります。平塚球場は比較的土が硬いから、そんなに影響は出ないかもしれませんが、土の柔らかい相模原球場や保土ヶ谷球場の2試合目などは、前に出て捕る時に注意が必要になってくるでしょう。
人工芝だって、今までどおりではないと思います。横浜スタジアムの人工芝は、緑の部分はきれいに弾むけど、オレンジ色の部分はきれいに弾まないと言われています。だから内野ゴロのバウンドが緑、緑、オレンジときたら、イレギュラーの可能性がありますね」
弱い打球で思い出されるのが、春の準々決勝の武相戦。3回裏2死一塁から、武相の2番打者・仲宗根琉空の当たりは、ドン詰まりの完全に打ち取った打球だった。しかし投手、一塁手、二塁手の「魔の三角地帯」(山本監督)に転がって、内野安打になった。ここからの6連打で武相が一挙5得点で逆転した。試合も6対5で武相が勝ち、日大藤沢はベスト8止まりとなった。
緩い打球の対策で、低反発バットでノックを試したこともあったが、新基準のバットは重い。ノッカーの手首に負担がかかりすぎるため、やらなくなった。「今はノックを緩く打っています」と山本監督は笑っていたが、緩い当たりへの対策が、今年の夏の結果を左右する。日大藤沢がどういう策を打ち出してくるのか。この夏の見どころのひとつでもある。