〈桐光学園・上〉3つの悔しさを胸に秘め、甲子園での躍動を誓う
昨秋は県大会に優勝し関東大会ベスト8に残るも、センバツ出場は惜しくも逃した桐光学園。今春は準々決勝で東海大相模に敗れた悔しさもある。キャプテン・森駿太を筆頭にポテンシャルを秘めた選手がそろい、12年ぶりの甲子園出場を狙う。
(文・写真/武山智史)
ホワイトボードに書かれた3つの日付
10月24日、1月26日、4月28日。
桐光学園野球部グラウンド、1塁側ベンチのホワイトボードの一角にはこの3つの日付が記されている。
1つ目の「10月24日」は昨秋の関東大会準々決勝で山梨学院に延長11回タイブレークの末、2対4で敗れた日。2つ目の「1月26日」は今春のセンバツ出場校発表でセンバツ落選が決まった日。3つ目の「4月28日」は今春の県大会準々決勝で東海大相模に5対8で敗れた日だ。センバツ出場校発表直後に2つの日付がホワイトボードに先に記され、春季大会後に3つ目の日付が加わった。
キャプテンの森駿太が説明する。
「『喉元過ぎれば熱さ忘れる』ではなく、どんなに前の出来事だったとしても悔しさを忘れないためです。3つの日付を起点にして、もう一回レベルアップしていく。昨秋は県で優勝して関東大会に出場し、センバツには選ばれなかった。自分たちはまだ成功体験がないため、いつでもチャレンジャーの気持ちを持っています」
現3年生が入学直後の2年前の春、森、中村優太、矢竹開の3人は1年生ながらスタメンに名を連ね、県大会優勝を経験した。下級生から出場してきたメンバーも多く、試合経験が豊富な点は大きな強みだ。特に打線は森、中村、矢竹の3人だけでなく、2年生の白鷹悠人など力のある打者がそろう。昨秋は県大会優勝を果たし、その高い能力を証明した。
野呂雅之監督はチームの現状に対してこう語る。
「練習試合や公式戦で打席に立ってきた経験値はあるけれど、まだ生かしきれていないと感じます。頑張ってはいるけれどなかなか上がってこない今の時期を超えていけば、良いものが出てくるのではないでしょうか。その兆しはあると思っています」
投手陣に目を移すと、長身右腕の法橋瑛良がエースとしてけん引。力強い直球を武器とする2年生の加賀滉太、変化球が持ち味の竹内鯨太も夏に向けて調子を上げている。普段はサードを守る森やレフトの緒方大起といった野手も登板機会をうかがう。
キャッチャーの中村は「ピッチャーと目を合わせることを大事にしています」と語るように、コミュニケーションを重視したリードで引っ張っていく。球際に強いショートの鈴木真心、守備範囲の広いセンターの矢竹とセンターラインの守りは堅い。「春先は良いゲームと悪いゲームのギャップが大きかったんですが、春以降はたとえミスが出たとしても、最低限のゲームメイクができるようになりましたね」と野呂監督はチームの成長を挙げる。