〈横浜緑園/横浜旭陵・上〉合同チームでも3年間で野球が上手くなる
野球が上達する喜びこそが、野球の原点であり、その後のモチベーションにつながる。少人数でも、狭い場所でも練習できるメニューがあれば、合同チームでも強くなれる。野球を楽しめるようになる。横浜緑園・横浜旭陵は考え抜かれたメニューで個を磨き、組織力を高めていた。
(文・写真/久保弘毅)
できないことが、できるようになる
6月の練習試合で、3年生の左打者・影山建兆が打席に立った。初球は右投手のカーブに空振り。2球目も相手バッテリーはカーブを続けてきた。影山はバットに当ててファウルにする。0ボール2ストライクと追い込まれた。増田亮監督は影山に声をかける。
「内容のある2ストライクだよ。バットを振ることで、変化球に合わせられた」
追い込まれた影山は、1つボールを挟んだあと、今度はストレートをファウルにした。増田監督は大きくうなずく。
「変化球も見た。真っすぐも合わせられた。どっちがきても大丈夫。さあ、いこう」
結局、この打席の影山は、真っすぐを打ってサードゴロに終わった。しかし最後までボールに食らいついていた。増田監督の言うとおり、内容のある打席だった。と同時に、増田監督の丁寧な声かけにも驚かされた。カウントの意味であったり、ファウルの内容であったりを、ここまで噛み砕いて説明できる監督はなかなかいない。選手も打席でのプロセスを理解できるだろう。
後日、増田監督はうれしそうに影山のことを話してくれた。
「そのあとの練習試合で、影山の打席の内容がよかったんですよ。以前はチャンスにバットが出てこなかったんですけど、その日は2死二塁の場面で、狙っていた真っすぐをセンター返ししました。セカンドに好捕されて、ヒットにはなりませんでしたが狙い球を初球から迷いなく振り抜きました。
次の打席では、さっき真っすぐを打っているから、相手も変化球で攻めてきました。その変化球を、影山がレフトに打ちました。レフトがライン際ギリギリにポジションを取っていたのでアウトになりましたけど、打席の内容が素晴らしかったです」
影山は高校2年から野球部に入った。
影山の他にも中学までスポーツをやらずに、いきなり高校野球に入ってきた選手もいる。
「高校野球ってハードルが高いじゃないですか。ウチぐらいなもんですよ。ハードルを下げて、色んな子がプレーしているのは。ウチの選手は一つひとつ導いてあげないと、プレーが成立しないんです。でも、それが高校野球の原点というか……」
希望ヶ丘や百合丘でも指導していた増田監督だが、横浜緑園で連合チームを見るようになって、アプローチが変わった。
「私自身は能力任せな選手でしたし、若い頃は高圧的な監督でした。自分自身が変わらなければと自戒の念もあります。こういう連合チームに出会えたことで、感覚を豊かにさせてもらえました」
最初からできる子は、放っておいても上手くなる。できない子をできるようにするのが一番難しいし、根気と労力がいる。増田監督をはじめとする横浜緑園・横浜旭陵のスタッフは根気強く丁寧に、野球の動きをパーツごとに分解して指導していた。