〈東海大相模・下〉チームTシャツ『結』に込めた思い。3年生の団結力を武器に挑む夏
東海大相模の3年生は12名。強豪私立としては少ない部員数だが、少ないからこその強みがある。ひとりひとりのつながりを深め、狙うは2019年以来の夏の甲子園。その先にある日本一まで突き進む。
(文/大利 実 写真/大利 実、BK編集部)
冬場に取り組んだフィジカル強化
東海大相模が甲子園に出場したのは、日本一を遂げた2021年のセンバツが最後になる。
昨秋は準決勝で横浜にタイブレークの熱戦の末に9対10の逆転サヨナラ負け。今春は桐蔭学園、桐光学園、横浜とライバル校を次々と破るも、決勝で武相に8対9で競り負け、頂点を逃した。
原監督にとっては就任後、3度目の夏を迎えることになる。
「冬場、フィジカル強化に徹底して取り組んできました。3年生を中心にトレーニングに対する意識が高い。フィジカルに関しては、これまでの中でもっとも強いチームです」
フィジカル強化とともに、ウォーミングアップから陸上選手がやるようなメニューを取り入れ、スプリント力の向上に力を入れた。
「もっと足は速くなる。実際、メンバーの多くはタイムが上がっています。脚力が上がれば必然的に、機動力を絡めた野球をしやすくなる。打つだけではない戦いを展開することができます」
得点を生み出すためのつながり
中村龍之介、金本貫汰、長尾幸誠のクリーンアップを中心とした破壊力抜群の打線が際立つが、「打線は水物」と言われるように、思うように打てない試合は必ずある。どのように打開して、得点を上げていくか。
「『打ちたい』という気持ちが強くなると、空回りしてしまうことがあります。メンタル面も含めて、打つことだけが攻撃ではないことを伝える機会を増やしています」
カギとなるのがフォアボールだ。たとえば、3ボール1ストライクから打つのか待つのか。フルカウントから、あえてミートポイントを近くに寄せて、ファウルで粘り、フォアボールを奪い取れるか。
就任時から伝え続けているのが、「つなぐ野球」。力が拮抗してくれば、長打や連打はそう簡単に出るものではない。フォアボールや進塁打が勝敗に関わっていく。
指揮官に「打線のキーマン」を聞くと、下位を打つことが多い才田の名前が挙がった。
「上位打線にはもちろん期待しています。金本は自分が飛ばせるポイントがわかっている。中村は天才型でハンドリング(バットコントロール)に長けている。長尾もスプリント能力が上がれば、もっとよくなります。キャッチャー視点に立つと、中軸までは警戒しながら、下位の打力が落ちるとホッとできる。そこで下位にも打てる選手がいると、バッテリーは気が休まるところがない。そういう意味でカギは才田。どこからでも得点が取れる打線ができれば、私もワクワクします」
夏のカギはチーム力
投手陣は、春に桐蔭学園と横浜に完投勝利を挙げた藤田、最速149km/hの2年生右腕・福田拓翔、さらに3年生の高橋侑雅、塚本空輝とハイレベルなメンバーがそろう。
「藤田は秋の横浜戦で悔しい負けを経験してから、取り組み方が変わり、苦しいことから逃げなくなってきました。春の大会後、特に良くなってきているのが高橋と塚本で、まるで別人ですよ。福田には、3年生の取り組む姿を見ながら、自分の課題と向き合い、成長していってほしいと思っています」
頂点を獲るだけの力は十分にある。あとは、その力を発揮できるかどうかだ。
夏に勝つためのカギは――。
守のキーマンでもある才田が、3年生を代表する形で言葉をくれた。
「1年のときに横浜、2年のときには慶應に負けて感じたのは、横浜も慶應も全員が仲間の力を信じて、チームで戦っていたこと。個々の力で戦おうとしたら、夏は勝てない。ミスをしても、誰かがカバーをしてくれると信じて、みんなで戦っていきたいです」